イギリスにおける電車の遅れや間引き、キャンセルはそう珍しいことではない。しかし、実際に電車を利用する通勤・通学客にとって、主要な乗換駅で電車発着遅延が発生するということは、物理的にも精神的にもカオス以外の何ものでもない。暗くて寒い冬の季節であればなおさらであろう。


問題の多いイギリスの鉄道


「退屈なクリシェを否定する」がウリのデジタル・マーケティング・エージェンシーTANK社が開発した運行遅延計算ツールによると、イギリスで最も遅延が多い駅はロンドンの主要駅であることがわかった。2024年7月〜12月までの間、660路線50の到着駅と出発駅の鉄道運行データを用いて、乗客が運休や遅延に遭遇する可能性を算出した結果だ。

鉄道道路局(ORR/Office of Rail and Road)のデータによると、2024年の遅延補償請求件数は760万件。であるにもかかわらず、2025年3月には4.6%の運賃値上が実施され、利用客の怒りは収まらない。


もっとも遅延が多いとされたのは、あの有名な駅だった!


不名誉な第一位はロンドン・キングス・クロス駅。ハリー・ポッターの小説に登場するホグワーツ特急の始発駅として有名になり、現在でも多くのポッターファンの巡礼地の一つとなっているのだが、ある調査によると、到着便の実に26%に5分以上の遅れが出たという。

世界最大級の旅関連口コミサイト「トリップアドバイザー」には、「ひどい場所、ひどいスタッフ」というタイトルのレビューが投稿されている。「12月27日に里帰りのためこの駅を利用したが、とんでもない混雑ぶりだった。同時に複数の電車の出発を知らせるアナウンスがあったが、改札は閉まったままで、そこは完全な混乱状態。赤ちゃんを連れた女性や、泣いている年配の夫婦もいた。怪我人が出なかったとしたらまさに奇跡と言って良いだろう。駅のスタッフもひどいもので、誰に対してもまったく配慮がなかった」という。また別のレビューでは、「使えないほど汚いトイレがある駅。それぞれのプラットフォームが離れていて、乗り換えにも苦労する」とあった。

ロンドン・キングス・クロス駅に続く最悪の駅として名前が上がったのが、マンチェスター・ピカデリー駅。到着便の24%が5分以上遅れたという。

他にも遅延便数が多い主な駅として、リバプール・ライム・ストリート駅、ハダースフィールド駅、ヨーク駅、ロンドン・ブラックフライアーズ駅、ダービー駅が上がった。

また、「最悪の通勤路線」としては、ピーターバラ駅からノッティンガム駅への路線がトップで、5分以上遅れた到着便が39便、平均遅延時間は7.5分となっている。2位はニュートン・ル・ウィローズ駅からリバプール・ライム・ストリート駅、3位はマクネスター・ピカデリー駅からカーディフ・セントラル駅までを結ぶ路線ということだ。


TANK社の通勤遅延計算機による結果発表!

信頼性の低い駅リストは、遅延率の他、運休率や平均遅延時間も考慮されている。

順位

駅 名

キャンセル(%)

5分以上の遅延(%)

平均遅延時間(分)

1 London Kings Cross

6

26

4.12

2 Manchester Piccadilly

8

24

3.89

3 Liverpool Lime Street

8

22

3.36

4 Huddersfield

5

24

3.94

5 York

5

24

4.08

6 London Blackfriars

7

18

3.52

7 Derby

4.5

21

4.14

8 London St Pancras International

6

19

3.30

9 Nottingham

5

20

3.49

10 London Paddington

5

19

3.21

ネットワーク・レール(Network Rail)が所有・管理するロンドン・キングス・クロス駅には複数の運行会社による鉄道サービスが提供されているため、それが同駅のオペレーションを更に複雑にしているというのも理由の一つなのだろう。今回の調査結果を受けて、同社の広報担当者は次のように述べた。「ロンドン・キングス・クロス駅は通勤客が多い一方で、国内有数の長距離駅の一つでもあり、スコットランドのアバディーンなど遠方からの列車も到着しますし、悪天候の影響を受けることもあります。しかし我々も乗客にとって信頼がいかに重要であるかは十分認識しています。引き続き全国の運行会社と緊密に協力して、信頼性の向上に取り組んでいきます。」

これが逃げ口上ではなく、将来誰の目にもはっきりと見える改良が行われることを祈ろう!(あるいは、イギリスの電車は遅れるものさと、腹を括るか・・・。)